契約交渉段階における信義則


Pocket

民法改正の中間試案は、判例で認められる「契約締結上の過失」につき、2つの定めを提案していました。以下、「中間試案」から参考に抜粋、記載いたします。(なお、この提案は要綱案すなわち法律案には採用されていません。しかし、確立された判例法であり、この原則を熟知した上で、相手方へ契約合意を迫ることは戦略交渉上、極めて重要です。

第 27 契約交渉段階

1 契約締結の自由と契約交渉の不当破棄

契約を締結するための交渉の当事者の一方は,契約が成立しなかった場合で あっても,これによって相手方に生じた損害を賠償する責任を負わないものと する。ただし,相手方が契約の成立が確実であると信じ,かつ,契約の性質, 当事者の知識及び経験,交渉の進捗状況その他交渉に関する一切の事情に照ら してそのように信ずることが相当であると認められる場合において,その当事 者の一方が,正当な理由なく契約の成立を妨げたときは,その当事者の一方は, これによって相手方に生じた損害を賠償する責任を負うものとする。
(注)このような規定を設けないという考え方がある。

2 契約締結過程における情報提供義務

契約の当事者の一方がある情報を契約締結前に知らずに当該契約を締結した ために損害を受けた場合であっても,相手方は,その損害を賠償する責任を負 わないものとする。ただし,次のいずれにも該当する場合には,相手方は,そ の損害を賠償しなければならないものとする。
(1) 相手方が当該情報を契約締結前に知り,又は知ることができたこと。
(2) その当事者の一方が当該情報を契約締結前に知っていれば当該契約を締結 せず,又はその内容では当該契約を締結しなかったと認められ,かつ,それ を相手方が知ることができたこと。
(3) 契約の性質,当事者の知識及び経験,契約を締結する目的,契約交渉の経 緯その他当該契約に関する一切の事情に照らし,その当事者の一方が自ら当 該情報を入手することを期待することができないこと。
(4) その内容で当該契約を締結したことによって生ずる不利益をその当事者の 一方に負担させることが,上記(3)の事情に照らして相当でないこと
(注)このような規定を設けないという考え方がある。

Pocket


PAGE TOP