「定型約款」の確認事項:


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「定型約款」について:

IT(情報)に関する委託契約の「【3】「IoT社会」のイメージと契約関係」で述べましたように、「クラウドサービス利用規約」「WEBサービス利用規約」等(名称は問いません、内容が「定型約款」に当たるかどうかがポイントとなります。)

改正民法の施行が間近に迫った今、現存の「定型約款」につき以下1.~5.の確認が必要です。

1.「定型約款」にあたるかどうかの確認。

「定型約款」とは:

(1)ある特定の者が、不特定多数の者を相手方として
(2)取引内容の全部または一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的な取引において
(3)取引契約の内容とすることを目的として(1)における特定の者より準備された条項の総体 (改正民法548条の2第1項柱書)

2.「定型約款」にあたる場合、契約締結時に「定型約款」を契約内容とする旨を示しているかの確認。

(1)「定型約款」を準備する者は、相手方から「定型約款」の提示を求められた場合、相当な方法で遅滞なくその内容を示さなければならない(改正民法第548条の3第1項本文)。なお、定型約款の準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面やこれを記載した電磁的記録を提供していたときは、上記の内容を改めて示さなくてもよいとされている(同項ただし書)。

「正当な理由なく提示請求が拒まれた場合」:上記の「定型約款」の提示の求めたにも関らず、正当な事由なくその請求が拒まれた場合、「定型約款」の合意はなかったものとされる(改正民法第548条の3第2項)。ただし、「開示を単に怠っただけ」で

は「請求を拒んだ」とまでは言えない。

3.「定型約款」が「みなし合意」の要件を満たしているかの確認。

(1)「定型約款」を契約内容とする旨の合意をした場合(改正民法第548条の2第1項1号)。(2)「定型約款準備者」が、あらかじめその「定型約款」を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき(同項2号)。

4.「定型約款」に不当条項はないかの確認。

「不当条項」とは:

(1)相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって
(2)その定型取引の態様及び実情並びに取引上の社会通念に照らして、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの (改正民法第548条の2第2項)。

5.「定型約款」を変更できる旨の規定があるかの確認。

定型約款準備者は、以下の場合に約款の内容を変更できることを明確に定めています(改正民法第548条の4第1項各号、以下の(1)(2))。

(1)相手方の一般の利益に適合するとき
(2)定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、以下の要件を満たすとき
1)変更の必要性
2)変更後の内容の相当性
3)この上の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めが有るか、無いか及びその内容
4)その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき

[経過措置]について:

改正民法の施行日前に「定型約款」を内容とする「定型契約」が締結されていた場合にも「定型約款」の規定が適用されることとなります(附則33条1項)。

したがって、「既存の定型約款」でサービスの利用を受けている者も、「既存の定型約款」に拘束されます。

これを機に以下を確認・検討しておく必要があります。

[確認・検討事項]

もし「既存の定型約款」の効力に異議がある場合、施行日前に「既存の定型約款」の提供者に対して、新設される「定型約款」のみなし合意の規定(改正民法第548条の2ないし4)を適用することに反対する旨、書面により意思表示しておく必要があります。

※【引用・参考文献】
以上は、『民法改正で変わる!契約実務のチェックポイント』(野村豊弘監修、虎ノ門南法律事務所 編著、日本加除出版株式会社p51④実務への影響)を下書きに、以下を参照の上、加筆・修正し、当サイト原田が作成したものです。

(1)『「民法改正」法案』(大久保紀彦 他5弁護士監修、中央経済社 編集)
(2)法務省の民法改正に関する以下のサイト: http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00175.html

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