契約の結び方「具体論」


契約の結び方「具体論」

ここでは相対的に(相手と比較して)弱い立場の者(以下、「弱者」といいます)が、「契約を結ぶ」にあたり、絶対に外してはならない「基礎」を解説します。
その後、以下を解説します。
【Ⅰ】「契約書」作成上の3つの留意点
【Ⅱ】「契約締結」上の3つの戦略ポイント

契約に関する「基礎」は、次の条文です

 民法第91条(任意規定と異なる意思表示)
法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

民法第92条(任意規定と異なる慣習)
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。 

したがいまして、民法上の優先順位は、
「強行規定」>「当事者の意思表示」>「慣習」>「任意規定」ということになります。
         (「強行規定」とは、「公の秩序に関する法令の規定」のことです。)

なお、商法を加えた場合の優先順位は、
「商法の強行規定」>「民法の強行規定」>「当事者の意思」>「商法の任意規定」>「商慣習」>「慣習」>「民法の任意規定」となります。

以上を「契約」に関わる法律上の前提(「基礎事項」)と理解し、以下
【Ⅰ】3点に留意し、【Ⅱ】3点を実施し、【特記】(1)(2)を検討し、「契約」を結び(結ばない決定をし)ます。

【Ⅰ】「契約書」作成上の3つの留意点:(「リスクの洗出し」と「リスクコントロール」)


 「契約書」原案を自社が作成する場合、並びに、相手方から「契約書」原案の提示を受け「カウンターオファー」(当社の契約書はコレですと提案)する場合において、以下を行います。
(即座に行えることが絶対要件です。したがって、事前に準備が必要です。)

1.典型契約の場合:

民法・商法で定めている契約(典型契約「任意規定から逸脱していない か?」、「確立した判例から逸脱していないか?」、「慣習から逸脱していなか?」確認し、「任意規定」及び「確立した判例」「慣習」から逸脱していた場合には、自社のリスクを排除するためには何が自社に必要不可欠な要件か把握し、その要件に応じて「任意規定」・「確立した判例」・「慣習」を取捨選択し自社の不利にならないように契約条項に追加、修正、あるいは削除提案する。 

2.非典型契約の場合:

民法・商法で定めのない(非典型契約)「契約書式集」を利用する場合、強者の立場で作成された文例集である場合が多いので、「理不尽な結果とならないか?」、「不公正な結果を招くことにならないか?」、「妥協の範囲内であるか?」につき、上記1.と同様に何が自社に必要不可欠な要件か把握し、その要件に応じて「任意規定」・「確立した判例」・「慣習」を取捨選択し自社の不利にならないように契約条項に追加、修正、あるいは削除提案する。  

3.強行法規の適用がある場合:

当該「取引に適用される」法令(「不公正な取引方法」を取り締まる法律、各省庁のガイドライン、業界自主ルール等)(「強行法規」)に は何があるかを知り、「公序良俗に反し無効とならないか?」、無効とはならないまでも「禁止行為であり処罰の対象ではないか?」、上記1.2.と同様に、何が自社に必要不可欠な要件か把握し、その要件に応じて「任意規定」・「確立した判例」・「慣習」を取捨選択し自社の不利にならないように契約条項に追加、修正、あるいは削除提案する。  

[強行法規の例]
(1)「製造委託契約書」 →下請法(公正取引委員会のホームページ「概要解説」へリンクしています。)
(2)「代理店契約書」 →独占禁止法(公正取引委員会のホームページ「概要解説」へリンクしています。)
   
(例示であり、契約により強行法規は各々存在します。建築工事契約→「建設業法」、雇用契約→「労働基準法」などのほか

【Ⅱ】「契約締結」上の3つの戦略ポイント:(現場情報の把握と経営判断)

1.実務の現場で履行することができない(日常的に実務が廻らない「必要を超える殊更 に厳格な」、「形式に過ぎる」)条項化は行わない

2.契約の相手方における「実務の現場」との関係「狭義の力関係」) に配慮の上、自社「取引現場」情報を収集整理し、「譲れない一線」「譲れる範囲」の自社内統一意思を明確にすること。 (cf.「広義の力関係」配慮とは、上記【Ⅰ】1.2.3.に拠る「リスクの洗い出し」と「リスクコントロール」)

3.「契約」 についての本来の目的・意義を正しく認識し、 戦略思考をもつことが求められてきています

  以上が「弱者」(多くは中小事業者)が「強者」(多くは大企業)と対等に契約交渉を進めるための最低限準備すべき手続です。

  (以上【Ⅰ】【Ⅱ】の「基礎」を固め、「事業計画のミッション」実現を企図し(→事業者間の「契約書の意義」(1.~4.及び【解説】)を    再確認)、民法第1条(基本原則:「信義誠実」)に即して「合意に至るように」、相手方と戦略交渉します。)

    →戦略交渉には「カウンターオファー」としての「契約書」の事前準備が、絶対必要条件です。

【特記】:上記【Ⅰ】【Ⅱ】(「契約上のリスク対応」)以外の対応策について:


交渉には相手方の意向があることでもありますし、リスク・コントロールできない(相手方の提示条件で契約せざるを得ない、リスク予測できない)場合も現実には存在します。また、不測の賠償金負担・災害対応等の対策のために以下が必要かを検討します。
(1)引当金等の財務的手当て
(2)保証、保険等

 以上、「契約上のリスク対応」の他、総合的な備えをも検討し「合意」「非合意」の経営判断を下します。
すなわち、「契約締結するか?」「契約締結しないか?」の是非を最終決定するためには、以上の手続と検討を経ることが必要です。

ご確認(質問、疑問、意見等)は、コチラ(「お問い合わせ」)からお願いいたします。行政書士 原田 豊

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